国内MBAの入学試験の種類と難易度について解説。英語や経営知識は必須?
近年日本のビジネススクールに通われてMBAを取得している方が増えてきました。
今回はMBAとは何か、日本国内のMBAはどのようなものか、入学試験や難易度、受験において備えておいたほうが良い知識などについてご紹介いたします。
目次
MBAとは?
MBAはMaster of Business Administrationの頭文字をとった略称で、日本では経営学修士、経営管理修士と呼ばれることが多いです。
MBAはビジネスを理論的に学ぶところで、経営を学んで起業したい人、稼業を継ぐ予定の人、MBAの知識と人脈を用いてさらに良い報酬を求める人など様々な目的の人がやってきます。
MBAは基本的にはビジネス経験のある社会人が目指す「専門職大学院」です。これは一般の大学院の修士課程と異なります。
文部科学省によると、下記のような違いがあります。
各課程 | 目的 |
---|---|
修士課程 | 幅広く深い学識の涵養を図り、研究能力又はこれに加えて高度の専門的な職業を担うための卓越した能力を培う。 |
専門職学位過程 | 幅広い分野の学士課程の修了者や社会人を対象として、特定の高度専門職業人の養成に特化して、国際的に通用する高度で専門的な知識・能力を涵養する。 |
また、専門職学位過程においては、実務家教員は3割以上とされており、少人数教育を基本とし、双方向・多方向に行われる討論や質疑応答、事例研究、現地調査等により実践的な教育を行うものとされています。
そして、通常の修士課程のように必ずしも論文を書くことを課されていません。
MBAを狙いたい、という場合はその学校がMBAなのかそうでないのか確認しましょう。
国内MBAについて
MBAと言えばやはり欧米系の学校が多く、イギリスのロンドン大学、アメリカのスタンフォード大学、ハーバード大学などが有名です。
日本のMBAは関東では一橋大学、慶応義塾大学、早稲田大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学など。関西では神戸大学、京都大学などがコースを設けています。
MBAは日本国内に約70のコースがあると言われていますが、MBAのカリキュラムは細かい規定があるわけではありません。
各校様々で、自分が学びたいことにマッチしている学校であるか事前に良く調べることが大切です。
いくつかの国内MBAのカリキュラムにおけるコア科目(基礎科目)を比較してみましょう。
下記表にあるものは、各校のホームページにある記載をそのまま反映しています。
一橋の「経営哲学」、青山学院大学の「ビジネス倫理」は特徴的と言えると思います。
もっと尖っていたり、個性の強い科目をコアとしておいている学校もあるはずです。
入学してから「自分の志向と違った!」ということがないようにしっかり事前に調べましょう。
学校名 | コア科目 |
---|---|
一橋大学 | 経営戦略、マーケティング、財務会計、企業財務、経営組織、マネジメント・コントロール、企業データ分析、経営哲学、理論構築の方法 |
神戸大学 | Managing Products Ⅰ: Sales & Marketing Managing Products Ⅱ: Technology & Operations Management Managing Resources Ⅰ: Individuals & Groups Managing Resources Ⅱ: Controlling & Reporting Integrating Products & Resources: Strategy |
東京都立大学 | 経営戦略、マーケティング、経営組織・ヒューマンリソースマネジメント・意思決定、 会計学、マネジメント・サイエンス |
青山学院大学 | 経営戦略、ファイナンス、マーケティング、アカウンティング、オペレーションズ・マネジメント、ビジネス倫理、企業経営の経済学、統計分析 I、組織行動 |
早稲田大学 | 経営戦略、マーケティング、ファイナンス、財務会計、人材・組織、総合経営、グローバル経営 |
試験について
MBAの試験は、通常の大学入試とは異なります。
大学入試は多くの場合、筆記試験の結果で勝負が決まりますが、MBAでは総合力が見られます。
①研究計画書
②筆記試験
③面接試験
の3段階でどんな人物かをチェックしています。
ほとんどの学校で、①研究計画書と③面接試験が行われます。
②の筆記試験を用いているのは難関校と呼ばれている学校で一橋、京都、神戸、東京都立、慶應、早稲田などです。
ここ2年ほどはコロナの流行により、一堂に会することを避けた慶應、早稲田では2021年度入学・2022年度入学の試験では、筆記試験を行っていません。
研究計画書
「将来計画書」や「エッセイ」など呼び方は様々ですが、自分のこれまでの実績、卒業後どうなりたいか、何を研究したいかなどをまとめます。
研究計画書による書類選考を行い、突破しないと筆記試験や面接に進めない学校もあります。
自分のキャリアの棚卸をし、何を軸に書くかを決め、それを誰もがスラスラと読める分かりやすい文章で書きあげることが重要です。
筆記試験
与えられた問題を時間内に解けるか、思考力を見ています。
学校によって経営の知識がないと解けない問題、知識がなくても解けるが発想力を要する問題など様々です。
過去問を公開している学校が多いため、ホームページで確認をしたり、各大学の受験窓口に問い合わせてみましょう。
面接試験
研究計画書の内容を深堀した質問で、どこまで真剣にMBAを志しているかを確認します。
中にはまったく意図しない質問をされることもしばしばあります。
志だけではなく、いかに視野を広げて日ごろ考えているか見られる試験です。
想定問答をつくり、模擬面接やイメージトレーニングをして準備をしておきましょう。
受験の難易度について
人気校と言われている学校は年々倍率が上がっており、倍率が5倍以上となることもあります。
また、大学受験と異なり「周りが大学に進学するから自分も受験しよう」ではなく、強い意志を持った大人が、自腹で数百万円かけてでも学びたい、と挑むわけですから同じ5倍であってもMBAにおいてはかなり厳しい戦いと言えます。
ただし、先述したように国内MBAは約70のコースがあり、コア科目も各校特徴があります。
自分に合った学校を選べば、必ずしも厳しい競争にならないかもしれません。
MBA受験における必須のスキルや知識
MBA受験における必須のスキルや知識について見ていきましょう。
ビジネス経験
学校によっては受験の資格として実務経験を求めている場合もあります。
例えば早稲田大学の「1年制総合」、「夜間主総合」、「夜間主プロフェッショナル」では常勤者として満3年以上の実務経験を有する者との記載があります。
ビジネススクールでは30代〜40代くらいの方が多く、やはりある程度の実務経験がないと授業におけるディスカッションやグループワークで貢献ができなかったり、ついていけない場合も考えられます。
英語
MBAと聞くと、英語ができないとダメなのか?と不安になる人も多いと思います。
結論から言うと、国内MBAの学生は多くが日本企業の会社員であるため、英語は必ずしも求められていません。
ただし、神戸大学のようにTOEFL(Internet-Based Test)120点中80点以上の者 ・TOEICテスト730点以上の者は入学時の英語試験免除という優遇措置を与えている学校もあります。
英語は、スピーチをするためというより、修士論文のための先行研究を読んだり、課題の論文を読むために必要です。
先行研究は日本語の論文だけを読み、英語の論文を用いない講義だけを取ることもできるとは思いますが、学びを深めるためには英語力があるに越したことはありません。
英語力があれば、交換留学に応募したり、留学生とのコミュニケーションが深くなり、他国の文化・商習慣を学ぶこともできます。
ちなみに私が受験した早稲田大学の全日制では外国人の教授もいたことから、面接では英語でのやり取りも少し求められました。
経営知識
経営知識を得るために入学するので、基本的には入学前には要しません。
ただし、国公立大学においては、経営知識がないと筆記試験で苦労することになるでしょう。
理論などの直接知識を問うものや、経営知識の基礎が分かっていないと読み解けない長文読解も出題されます。
そうではない場合も、合格者の多くは経営学の基礎知識を携えていることが多いため、対等な議論を行うためにも、大学(学部)で学ぶ経営学の基礎レベルは、おさらいしておくことをお勧めします。
理系出身者、文系でも経営は学んだことがない方も多数合格しています。興味がある分野で、「とっつきやすい」本から試してみましょう。
【おススメ本】
・楠木健 「ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件」 東洋経済新報,2012年
・三谷 宏治 「経営戦略全史」 ディスカヴァー・レボリューション,2013年
・杉浦 正和 「MBA『つまるところ人と組織だ』と思うあなたへ」 同友館,2014年
・入山 章栄 「世界標準の経営理論」 ダイヤモンド社,2019年
・菅野 寛 「MBAの経営戦略が10時間でざっと学べる」 KADOKAWA ,2020年
・西山 茂 「MBAのアカウンティングが10時間でざっと学べる」 KADOKAWA,2020年
・國貞 克則 「【新版】財務3表一体理解法」 朝日新聞出版,2021年