国内MBAの試験ではどこが見られる?入学願書、筆記試験、面接について解説

国内MBAでは、学校によって試験も様々です。

大学受験では、多くの場合入試当日の学力で勝負が決まりますが、社会人向けのMBAでは、当日の学力では勝負は決まりません。

今回は国内MBAの試験ではどこが見られる?入学願書、筆記試験、面接についてご紹介いたします。

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研究計画書

まずはどこの学校でも提出が求められる研究計画書について見ていきましょう。

各校の内容

研究計画書は、学校によってさまざまな呼び名があり、形式・内容もまちまちです。例を見てみましょう。
※内容は長文の場合、編集しています

学校 呼称 内容
一橋大学 A. 職務・学習に関する経歴書
B. 将来計画書
A. これまでに経験してきた職務・学習の内容とその成果・実績等(年代順に記述)
B. 志望動機・入学後の計画・修了後の計画
東京都立大学 研究計画書 (1)志望理由
なぜ経営学を学びたいか、なぜ本学経営学プログラムを志望するのか。
(2) 研究計画
① 研究テーマ(修士論文もしくは課題研究のテーマとして考えていること。リサーチ・クエスチョンの形になっていることが望ましい。)
② 研究の意義(その研究テーマにどのような学術上、あるいは実務上の意義があるのか。)
③ 研究テーマに関連してこれまでに論文や専門書等で学んだこと、自分で調べたこと(これまでに読んだ主な文献やアクセスした情報のリストを付すこと。)、関連した職務経験など。
④ 今後の研究計画(研究を進めていくにあたって今後どのような取り組みが必要か。履修すべき科目、読むべき文献、習得すべき研究手法、アクセスすべきもしくはアクセス可能な情報源など。)
早稲田大学 エッセイ 1. これまでの実務経験(または実務に相当する経験)のなかで成し遂げたこと、および現在の担当業務に関する詳細(職務、職責、業績など)について説明してください。
2. あなたのキャリアゴールを具体的に設定してください。それをどのように達成しますか?当研究科における学習・研究がその中でどのような意味を持ちますか。
3. 当研究科におけるあなたの志望プログラムへの期待と入学後に予定している研究テーマについて、以下の項目に言及した上で具体的に述べてください。
◆テーマ
◆当該テーマに取り組もうと考えた理由(課題・仮説)

書類の名称や聞かれている内容は一見バラバラですが、志望動機や何を学びたいかについては共通して聞かれる項目です。

また、これまでの経歴も、ズバリ聞かれていなかったとしても、志望動機においてはご自身の経歴(経験)に触れながら説明する必要があります。

これらを整理しておきましょう。

何を書くのか

研究計画書は書類審査に用いられる資料です。

志望校に対して、私を合格させてくださいとPRするためのものです。

これを書く上で、「自分には書面にかけるような立派な経歴がない」と悩む人は少なくありません。

MBAは立派な経歴を持つ人が行くところではなく、立派な経歴を持ちたいと思って行く人が大半です。

もっと言うと、「立派な経歴」自体があやふやなものです。

学部が東大や一橋大だった、大手企業勤務である、事業部長である…そのような経歴の方ばかりが受かるわけではありません。

ピカピカの経歴の人ばかりが集まった学校では偏った学びになるでしょう。

各校、できるだけ多彩な人材を集め、学生同士の化学反応も起こしながら切磋琢磨できる環境を作ろうとします。

あなたのそのままの強みを文書化しましょう。

強みの書き方が分からない、という声もよく聞きます。

ここでいう強みは、転職時の職務経歴書とは異なります。

転職時であれば、求められた成果を達成したか、どのような利益貢献をしたかなどがアピールになりますが、MBA受験においては、それだけでは足りません。

会社に定められた目標を達成したり利益を出すのは会社員として当然であり、さらに言うと人に決められた枠の中で出した成果です。

そうではなく、あなた自身が気づいて、手を動かして、状況を変えたことを書きます。

 

例えば

  • 営業職として働いているが1件1件訪問して契約を取ることが面倒だと感じて、企業を取りまとめている業界団体や自治体に狙いを定めて営業をかけ、1回の受注で20社、30社を開拓できるようになり、営業成績をクリアした。社内でノウハウを共有した結果、エリアのシェア率が10%から30%に上がり、他製品の受注にも結び付き、支社売上としても20%アップした。
  • 全国にある販売店で新人育成が現場任せで成長にも差が出ている。育成を標準化するためトレーナーを教育し、新人から評価の低い店舗からは新人を引き合上げる対応を取った。結果、新入社員の離職率が50%から20%に低下した。

 

このような事例で良いのです。

10億円の資金調達をした、新規事業で社長に抜擢された…そのような華々しい実績である必要はなく、日々の業務における工夫を書ければ良いのです。

ただし、日々の業務における成果は、自分では気が付かなかったり「大したことがない」と思ってしまいます。

そのため、客観的に判断できる第三者との会話を重ねて気づく工程が必要です。

この自分の経歴を深堀する作業を一緒にしてくれるのは予備校です。

キャリアの深堀をしてくれる予備校を選び、利用することが有効です。

筆記試験

各校の内容

筆記試験も各校様々です。知識がないと解けない問題、考えれば答えが導きだせる問題、長文読解など。

ホームページで過去問を公開している大学のものをいくつか見てみましょう。
※課題文が長文の場合、省略・編集しています

学校 形式 内容
一橋大学 長文読解問題 トーマス・シェリング著『ミクロ動機とマクロ行動』から抜粋
著作権の問題により、課題文非公開
東京都立大学 経営戦略論・経営組織論・マーケティング・会計学・データサイエンス・数学
より1科目選択
(経営戦略論のみ抜粋)
以下の問題の全てに答えなさい。
1.A.ブランデンバーガーとB.ネイルバフが提唱した「コーペティション(Co-opetition)経営」について説明しなさい。それを行った場合の効用とリスク、及びM.ポーターによる業界構造分析との比較を含めて論じること。
2.企業が異なる事業を複数保有すること(以下、多角化という)について下記の質問に答えなさい。
(1)経営者が多角化を行う動機について説明しなさい。
(2)上記で説明された同期に対する株式投資家の見方を述べ、多角化が株式市場において許容される条件について説明しなさい。
早稲田大学
(2022年・2021年度入試は筆記試験中止。直近の2020年度冬入試を記載)
論述問題 マキアヴェッリの『君主論』を現代のビジネスに置き換え考えを問う問題が3問出題。

どうやって対策するのか

まずは過去問を解いてみましょう。

難易度を知るためには、それが良いです。

一橋のように、課題文が公開されていないものでも、課題文の出典が分かる場合は、その本を読んでみましょう。

上記の例を見てもわかるように、MBAの筆記試験は決して易しいものではありません。

東京都立大学の1の問題のように、その知識がズバリないと解けないものもあります。

ただし、東京都立大学の2の問題や、一橋大学、早稲田大学の試験においては国語力や思考力、洞察力、一般教養としての経営知識があれば解くことができます。

これを高める訓練をします。

必要なものは経営学の基礎知識。

経営学の知識は入学後に学ぶので必要ない、というのが多くのMBAの基本スタンスではありますが、完全にゼロの状態で受験するのは無謀です。

大学の学部生が触れる基礎的なものは、インプットしておきましょう。

それからロジカルシンキング。

筆記試験ですから、自分の考えを読み手に伝える必要があります。

読み手がスッと理解できる文章にするには、論理的であることが重要です。

これを徹底して鍛えます。また、筆記試験は手書きで行われるため、誤字脱字は減点となります。

漢字が苦手、あやふやという人は、おさらいしておきましょう。

最も効率的な勉強方法は、MBA専門の予備校や教材に頼ること。

社会人となり筆記試験自体にブランクがある場合、数か月の独学では上記のような試験をクリアするのはかなり難しいと言えます。

面接

何を聞かれるのか

面接では基本的に研究計画書の内容を聞かれます。

これまでのキャリア、志望動機、卒業したらどのようなことをしたいのかなど。

研究計画書に書いてあったとしても、改めて聞かれたり、深掘りして聞かれたりします。

このとき、自分が想定していないポイントを聞かれることもあります。

これは何を見られているかというと、「本気度」と「ロジカルシンキングができているか」です。

研究計画書に書いてあることが、受験のために上辺で書いたことではないことを確認します。

様々な角度で質問し、それに対してどの程度深く考えているかを見ています。

また、ここで重要なことは、課題に対してある程度自分で答え(仮説)を持っていることです。

「会社内で起きている課題の解決をしたい」と書いていれば、その課題はそもそもなぜ起きているのか、その課題は本当に対処ができることなのか、放っておくとどのくらいの影響があるのかなど質問されるでしょう。

これらの仮説はある程度持ったうえで面接に進みましょう。

通学する2年間で教授陣から教えてもらいながら考える、では甘いのです。

また、競合他社ではどうか、異業種での成功事例はあるかなど広い視野で質問されることがあります。

もし、想定していなかった質問であっても知りうる知識で導き出せる答えもあるでしょう。

聞かれたことに対して的確に答えられるかというロジカルシンキングも見られています。

なぜならビジネススクールでは議論をしながら答えを導き出すスタイルの講義が多く、ロジカルシンキングができないと議論に参加することが難しく、議論を乱すことにもなるため、慎重に判断されます。

国内ビジネススクール(MBA)の面接で聞かれることと対策のポイントとは

どうやって対策するのか

ロジカルシンキングを鍛えることです。

論理的に考え、アウトプットできるようになりましょう。

研修会社が開講している講座を受けに行っても良いですし、市販の本を読んでも良いです。

ただし一朝一夕に身につけることは難しいため、繰り返し復習し、アウトプットし続ける必要があります。

模擬面接も重要です。面接の場面は非常に緊張します。

ぶっつけ本番ではうまく話せないかもしれません。

できれば模擬面接をしてくれる相手を見つけて行う、相手がいなければ自分だけでも質問を想定し、それに対して口を動かし答える訓練をしておきましょう。

この記事を書いた人
この記事をかいた人 太田 卓(MBAゼミナール プログラムディレクター・講師)証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2017年7月株式会社Milkyways設立。2022年より国内ビジネススクール(MBA)の入学対策予備校・塾であるMBAゼミナールをスタート。 早稲田大学大学院商学研究科専門職課程ビジネス専攻(現:経営管理研究科)修了。