国内MBA受験のための研究計画書の作成方法とポイントとは

国内MBAに出願するときには研究計画書を提出する必要があります。

「研究計画書」と聞くと、難しい内容を書かないといけないのでは?と思うかもしれませんが、ビジネススクールによって項目も分量も大きく異なります。

MBA入試の初めの関門、研究計画書はどのように取り組むのが良いかを見ていきましょう。

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研究計画書とは

MBA試験においては、研究計画書・筆記試験・面接試験と3段階の試験があります。

筆記試験は取り入れているビジネススクールと取り入れていないビジネススクールがありますが、研究計画書はどこの学校でも提出が必要です。

面接に進む場合も、話題のベースは研究計画書であり、非常に重要な書類と言えるでしょう。

研究計画書と一言で言っていますが、ビジネススクールによっては「エッセイ」「将来計画書」など呼び方は様々です。書く内容はかなり共通しています。
①実務経験
②志望動機
③キャリアゴール(卒業したらどのようなことをしたいか)
④研究テーマ(何を調べてみたいか)
この4つです。

個別の項目は一見書けそうですが、難しいのは「すべてが繋がるように」「初めて読んだ人にもわかるように」書くことです。

例えば、こんな研究計画書を書いてきた人がいたとします。

好ましくない例

「菓子メーカー勤務でルート営業を担当してきたが(実務経験)外資系の戦略コンサルタントとして活躍したい(キャリアゴール)。

そのためにMBAで学びたい(志望動機)。研究したいことは日本でお菓子が流行する条件(研究テーマ)」

上記の記述から読み手が持つ疑問や感想としては、
・菓子メーカーから外資系の戦略コンサルタントとして活躍したいと思っているのに、研究テーマが菓子に関することであり、キャリアゴールを本当に実現したいと思っているのか?と疑う
・営業職なのにトレンドやマーケティングの研究をしたいと言っている。マーケティングの部署に異動して活躍したいとは一言も書いていない。興味本位で研究テーマを設定しているのか?と思う。
・外資系の戦略コンサルタントになるためにMBAを目指すとあるが、コンサルタントはMBAが採用条件になっているのか?今の自分に何の力が足りないのか認識した上でMBAを目指しているのか?MBA=コンサルとイメージが先行し過大な期待をしているのでは?と分析が足りない状況で安直な志望動機に見えてしまう。

このように、ストーリーに一貫性がないと書類の段階でツッコミどころ満載です。

仮に面接に進めても、つじつまが合っていないところを確認する厳しいツッコミタイムとなるでしょう。

研究計画書の書き方

研究計画書の書き方

実際に研究計画書をどのように書いていけば良いのかについて見ていきましょう。

実務経験

実務経験は、転職時の職務経歴書と同じと考える方もいますが、そうではありません。

転職希望の企業に提出する職務経歴書は、前職で会社に定められた目標をいかに高いレベルでクリアしてきたか、その業務内での成果を書くものです。

MBAでは、決められたルールや業務内で出した高い成果についてはそれほど重要視しません。

もちろん成果を上げているに越したことはありませんが、その過程でどんな工夫をしたのか、どんなハードルをどうやって乗り越えたのかが重要です。

また、決められた仕事ではなく、自分で課題と感じたことを会社へ発案し、行動して成果を出したなどの能動的な成果の方が重視されるでしょう。

MBAは経営を教えるところであり、優れた社員である方法を教えるところではありません。

ビジネススクールに提出する実務経験は自分でなければできなかったこと、より能動的に、工夫したことを書くのがよいでしょう。

【好ましくない例】
・支店の売上成績を5年連続で達成している(会社の目標なのだから達成するのが当たり前)
・新規事業開発において、〇〇の事業をローンチした(新規事業開発のミッションそのまま)

【好ましい例】
・コロナで支店の売上成績が前年度の半分になったが、既存商品の新用途の提案をし、お試しイベントの催事を県内100か所で行った結果、翌年はコロナ前の売上の2倍の売上を上げることができた。
・新規にローンチした〇〇が見込みの30%しか売れなかった。異業種のA社とB社のマーケティング部門に掛け合いコラボとして売り出したところSNSで10万リツイートされ、目標の300%の売上となった。
・自社のデリカは稀に売れ残りが生じる。賞味期限の1時間後にはゴミ箱行きになってしまうことを回避したいと考え、新たに鮮度をより長く保てる保存方法をパッケージメーカーなどと打ち合わせの末企画案を作成し役員会で提案して承認を得た。現在はすべてのデリカ、菓子などに適用し、廃棄が前年度の20%までになった。

結果だけではなく、どのような行動をとりどの程度の結果を出したか、誰から言われたわけでもないが自分が課題と思ったことに着手し動けたかという能動的な行動や考えをアピールできると良いでしょう。

志望動機

志望動機にはMBAへの憧れや勉強したいからという理由ではなく、自分に必要な理由を論理的に書くことが求められます。

学びに対する目的意識が弱かったり、軸がないものであれば、身になることも少ないでしょう。

働きながら1〜2年間通学することは大変です。各ビジネススクール、卒業生には活躍してもらいたいと思い教育を行っています。

より強い意志を書くようにしましょう。

【好ましくない例】
■MBAへの動機として
・経営全般を学びたい(ほとんどの人がその動機であり、それ以外にあるのかを聞いている)
・体系立てて学びたい(ほとんどの人がその動機であり、それ以外にあるのかを聞いている)

■そのビジネススクールへの動機として
・〇〇先生の本を読んで感動し、是非〇〇先生のもとで学びたいと思った(〇〇先生がいつまでもその学校にいるとは限らない、ゼミ単位の募集でない場合〇〇先生のゼミに入れるか保証はない、〇〇先生の授業を単科生として学べばいい)
・国際認証をとられた御校で学びたい(国際認証がなければ興味を持たなかったのか)

【好ましい例】
■MBAへの動機として
・会社の急激な拡大とともに、直近3年間で社員数が2倍になった。新卒採用も来年度から開始する。そのため適切な人材育成や配置、会社の現在の状況における適正な人件費などを検討しなくてはいけない。組織運営に関する知識と財務面を学ぶことで、より良い経営ができるように学びたい。

■そのビジネススクールへの動機として
・製造業の営業として10年間1社で働いてきており、他分野に対する視野が狭い自覚がある。異業種、異職種のできるだけ多くの事例に触れ仕事に活かしたい。御校は1学年200人と大人数であり、ケーススタディを用いた授業を主とされていて、私が求めている学びが得られると感じている

志望動機はより詳しく、具体的な方が良いでしょう。あやふやな志望動機では、仕事と勉強の両立が辛くドロップアウトしてしまうかもしれません、志望動機はその見極めにもなっています。

キャリアゴール(卒業したらどのようなことをしたいか)

各ビジネススクールは卒業生に活躍してもらいたいと考えています。卒業生に活躍してもらえると、そのビジネススクールの名前も売れるため、志望者が増えるという側面があるからです。

そのためキャリアゴールは非常に重要なチェックポイントになります。

【好ましくない例】
・現在の会社で管理職になる(そのまま頑張ればなれるのでは むしろMBAなど目指さず仕事を頑張った方が近道では)
・皆が安心して働ける環境を作りたい(理想の環境ではなくキャリアゴールを聞いている 具体性がない)

【好ましい例】
・当社は〇〇の領域が弱いことが明確であるが、自分以外に〇〇領域に明るい人材がいない。人材調達するにも市場に出てこない。御校で学び、私が〇〇領域を専門にする部門を立ち上げ、専門知識とスキルを備えた人材を育成し、現状を打破する。
・過去、日本で〇〇ビジネスは成功しにくいと言われてきた。私は販売対象を法人から個人向けにすることで成功できると仮説がある。日本初の成功企業として、自社の名を知ってもらいたい。

そのままビジネススクールに入ればなんとかなるような目標や、抽象的な内容ではキャリアゴールとして記載するには弱いと言えます。

自分は難しい壁も乗り越えてこれを実現する、という強い気持ちを書きましょう。

研究テーマ(何を調べてみたいか)

MBAを目指すということは専門職大学院に通うということです。

セミナーを受講するのとは違い、インプットだけではなくアウトプットも必要です。自分が1〜2年間で何を明らかにしたいと考えているか思いを書きます。

【好ましくない例】
・〇〇社(自分が勤務している会社)における人材の適正配置とは(大手企業の社員にありがち、組織が大きいので自社の課題が研究テーマのレベルとしてふさわしいと考えて設定する。ほかに応用が利かず、研究する間でもなく自社で試行錯誤し導き出せばよい)
・根本の原因に踏み込んでおらず、上辺の課題で原因とかけ離れたことをテーマにする

【好ましい例】
・〇〇業界における人材の適正配置とは
・美容ドリンクの50代女性における購買動機とは

研究は、その研究を活用しさらに研究が深まり、世の中に何かしらの貢献をもたらすものです。

自社だけにフォーカスをしたり、狭すぎるテーマだったり、何のために調べるのか意味が不明なものは好ましくないでしょう。

それを調べることで、業界全体として兼ねてから課題であったことにメスを入れたり、特定の分野できちんと調べられていないことを明らかにし販路開拓の可能性を示すなど、何かの役に立つことをテーマに設定すると良いでしょう。

ただし、在学中の期間で調査ができ、現実的に調べることができるのかも考慮します。

研究計画書は第三者にもチェックしてもらおう

以上の①実務経験、②志望動機、③キャリアゴール(卒業したらどのようなことをしたいか)④研究テーマ(何を調べてみたいか)を一貫性があるストーリーで書くこと、そして専門用語やアルファベット、カタカナの多様などをせずに初見で見た人が分かるように書くことが重要です。

一度書いたら、第三者、できれば異業種の方に分からない表現がないか、書いてある内容に疑問がないか読んでもらい指摘してもらうと良いかもしれません。

MBAゼミナールでは国内ビジネススクールの入学対策として研究計画書対策を行なっていますので、ご関心があればご確認していただければと思います。

参考:研究計画書対策を見る

この記事を書いた人
この記事をかいた人 太田 卓(MBAゼミナール プログラムディレクター・講師)証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2017年7月株式会社Milkyways設立。2022年より国内ビジネススクール(MBA)の入学対策予備校・塾であるMBAゼミナールをスタート。 早稲田大学大学院商学研究科専門職課程ビジネス専攻(現:経営管理研究科)修了。