MBAに対する世の中の誤解とは?費用対効果についても解説

「MBAを取得している人」と聞いてどんなイメージを持たれるでしょうか。

優秀、高年収などのイメージを持つ人もいると思います。

一方で「日本ではMBAの学歴は通用しない」、「海外MBAはまだしも国内MBAは価値がない」など否定的な見方をする人もいます。

今回はMBAは役に立つのか?MBAに対する世の中の誤解についてご紹介いたします。

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MBA取得者は優秀なのか

多くの方が気になる点だと思いますが、そもそもMBA取得者は優秀なのかどうなのかについて見ていきましょう。

偏差値と難易度

まず、MBAには偏差値はありません。

そもそも偏差値がどのように決められているかを説明します。

大学(学部)には偏差値がありますよね。

あれは大学受験予備校が行う「全国統一模試」のような多くの受験生が受ける模擬試験が元になっています。

模試を受け、その大学の合格者が模試で獲得した点数から算出した偏差値を元にしています。

大学が出している数字ではありません。

つまり、全国統一模試のないMBAには偏差値は存在しません。

模試をしようにも、筆記試験がない学校も多く、各校の試験形態が異なるため実施することは難しいのです。

学部の偏差値が高いといっても、その大学に設けられたMBAの偏差値が高いというわけではありません。

偏差値はありませんが、難易度は存在します。

人が多い大都市圏の学校、もしくはその逆でエリアに唯一存在している学校であれば倍率が高くなります。

人気校であれば倍率は5倍にもなります。

学部と違い「記念受験」をするような受験生はいないこと、自腹で学費を払う覚悟がある社会人が受験することを考えると人気校は狭き門になります。

筆記試験が課されている場合は、ロジカルシンキング・ロジカルライティングを習熟していなければ突破は難しいでしょう。

仮に入学の難易度がそれほど高くなかったとしても修了要件が厳しい学校もあります。

英語力が一定程度に達していないと卒業ができない、単位数が他の学校に比べ多い、留年が不可である、修士論文の審査が厳しいなどです。

入学時の倍率だけではなく、修了要件にも目を向ける必要があります。

修了要件(各校ホームページより)

区分 学校 単位 修論 その他
国立 京都大学 42単位以上 なし ・英語開講科目から4単位以上修得必要
・発展科目のワークショップⅡの単位修得の必要条件として特別講演・留学・インターンシップ参加、学会・研究会の発表実績に応じポイントを付与、20ポイント以上の獲得が必要
国立 一橋大学
(経営管理・経営分析)
34単位以上 あり
国立 神戸大学 34単位以上 あり
私立 早稲田大学
(全日制グローバル・1年制総合・夜間主総合・夜間主プロフェッショナル)
50単位以上 あり
私立 慶応義塾大学 60単位以上
※2021年度履修
案内より算出
あり 留年不可。1年から2年への進級条件を満たさない場合は退学。
私立 青山学院大学 50単位以上 なし TOEIC730点以上が求められる
私立 中央大学 46単位以上 なし

上記主要校を例として挙げていますが、いずれも厳しい条件があり、簡単に修了することはできません。

在学中は、まさに寝る間を惜しんで学業に励まなくてはなりません。

「MBAに行けば何とかなる」「学歴を上書きしたい」という人が多くいますが、勉強が嫌いな人や勉強する覚悟がない人がついていくのは難しいでしょう。

もともと勉強が好き、苦にならない人が集まり、さらに研鑽していく場であるため、結果として勉強ができ、優秀と言われる人が集まる場所になっていると言えます。

年収

他のコラムでも紹介していますが、MBA取得までにかかる費用は相当な金額になります。

私大の場合、入学金・学費・教科書代・留学費用・交際費など諸々かかれば500万円を超えることもあります。

受験生の多くは、貯金を崩したり、会社員をしながら給与の一部を学費に回すなどして通います。

そもそもこの金額を支払えるということなので、一般的な会社員より高年収であることが多いです。

そして、多くの方が気になる「MBAの取得により年収が上がるのか」という点についてですが、日本企業では、MBAを取得しただけでは難しいでしょう。

外資系企業に転職する場合であればMBA修了のキャリアを高く買ってくれることがあります。

まず、日本企業の場合。

日本企業において年収を上げるのであれば、MBAで蓄えた知識や人脈を使って、これまでにない改革をしたり新規事業を牽引したりと活躍をすることです。

在学中にしっかり学んでいれば、年収を上げるための知識や思考力は身についているはずです。

そして日本企業に転職する場合ですが、履歴書に「〇〇ビジネススクール修了」と書いてあっても「そうですか」で済まされてしまいます。

それよりも、実務経験や実績を問われます。

まずはMBAを活かして現職で成果を上げて昇進し、年収を上げてから転職先を探すことが年収アップの近道になります。

一方で外資系企業の場合ははじめからMBAのキャリアを加味してくれる場合があります。

外資系企業のほうが即戦力を求める傾向が強く、MBAの取得は一定レベルの知識があると見なされ採用時に有利に働くことは多いでしょう。

「部長以上はMBA必須」など昇進要件としている会社もあります。

外資系コンサルティング会社は採用したい人材の要件がMBA修了生のスキルセットに近く、積極的に採用する傾向があります。

全体としては、MBAは年収アップに寄与していると言えます。

2021年の調査でも、数値で現れています(調査は海外MBA取得者のデータも含まれています)。

参考までに紹介します。


【サマリー】
■ MBA取得後、初回の転職で500万円以上年収が上がった人は37.9%、300万円以上年収が上がった人は57.1%であった。
■ 40歳時点のキャリアでは、80.7% が年収1000万円を超え、38.6%が1500万円以上であった。
■ 45歳時点のキャリアでは、60.9%が年収1500万円以上であった。
■ MBA留学がキャリアのファストトラックになったと感じている人は75.2%であった。


【調査概要】

  • 調査期間:2020年12月23日~2021年1月31日
  • 調査対象者数:国内外のMBA取得者234名
  • 調査方法:インターネット

  • 参考:キャリア インキュベーション株式会社「【ポストMBAキャリアに関する調査】MBA取得後、初回の転職で年収500万円以上アップした人が37.9%、40歳時点では80.7%の人が年収1,000万円超と同年代の2倍以上の収入を実現」
    https://www.careerinq.com/company/news_release/2021/04/012009.shtml

    何を目的にするのか

    MBAを目指す人には、MBAが目的になっている人が少なくありません。

    「MBAの肩書があったら格好いいな」

    「学部は志望校の〇〇大学に受からなかったから、〇〇大学のMBAを取得してリベンジしたい」

    憧れや学歴の上書きをしたい気持ちがきっかけになり、自分のキャリアを見つめなおすことは有りうるでしょう。

    ただし、これだけが動機では、MBAを修了することも年収をアップさせることも難しいのではないかと思います。

    海外MBAでも国内MBAでも、年収をアップできる人の多くは、入学前に自分の課題が整理できています。

    財務の知識が弱い、人材のマネジメントがうまくできない、マーケットを読む力がいまいちであるなど。

    それが克服できれば仕事にどのようにプラスになるか、何ができるようになるかが明確なイメージを持っています。

    そして、実現のためにMBAが最適な手段であり近道と認識しているから目指すのです。

    明確な目的がないと、何のために勉強しているのか分からなくなり、辛くなります。

    どんな人脈を作ればいいかもぼやけるので、飲み友達はできるかもしれませんが継続的にビジネスの話ができる友人を得ることも難しくなるでしょう。

    何のために行くのか。

    自問を繰り返し、答えが明らかになってから目指しても遅くはないと思います。

    この記事を書いた人
    この記事をかいた人 太田 卓(MBAゼミナール プログラムディレクター・講師)証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2017年7月株式会社Milkyways設立。2022年より国内ビジネススクール(MBA)の入学対策予備校・塾であるMBAゼミナールをスタート。 早稲田大学大学院商学研究科専門職課程ビジネス専攻(現:経営管理研究科)修了。