ビジネススクール(MBA)に興味関心がある方や通われている方の中で、起業を目指している方もいるかもしれません。

実際にビジネススクールに通った後に起業した実体験をもとに、ビジネススクールは起業に役立つのかについてご紹介いたします。

バナー

ビジネススクール(MBA)は起業に役立つ?

ビジネススクールは起業に役立つのかについてですが、私の意見としては役立つこともあれば役立たないこともあり、一言で言うとあまり役立たないと思います(あくまでも個人的な意見ですので、人によって個人差があると思いますが)。

その理由について、ビジネススクールで学ぶ内容を踏まえて見ていきましょう。

学ぶ内容としては大きく分けて、

  • ①経営学理論
  • ②フレームワーク
  • ③ケーススタディ(事例研究)

があります。

①経営学理論

ビジネススクールで学ぶ内容の中でメインとなるのは経営学理論です。

ビジネススクールと言えばフレームワークをたくさん学んで、コンサルや経営企画とかの実務でバリバリ使ってカッコ良い感じになるんじゃないの?と思われる方もいるかもしれませんが、MBA(経営学修士)を取得するような学校の場合にはアカデミックで学術的な理論を中心に学ぶ場合が多いです。

そのために実務で有名な教員の方だけではなく、博士号を取得している研究者の教員の方が中心となっている学校も多いです。

特に私立よりも国公立のビジネススクールでこの傾向が強まります。

実務で活用するために経営学を学びたいと言う方もいれば、アカデミックな研究をしていきたいと言う方もいると思いますが、あくまでも経営学を学ぶための「学校」ですので、過去の企業や経営者などの研究分析を行って解き明かされてきた理論を学ぶことに重きを置かれています。

②フレームワーク

経営戦略やマーケティングなどに多く出てくるのがフレームワークで、SWOT分析や3Cなど有名なフレームワークをお仕事で利用したことがある方も多いのではないでしょうか。

ビジネスにおけるフレームークとは、上述した経営学理論に基づいていてもいなくてもどちらでもOKで、現状分析を目的としたわかりやすい枠組みのことを指します。

例えば経営学理論ですと、リソース・ベースト・ビュー(RBV)のように企業内部の経営資源に注目して経営戦略を立案していく理論のことで、リソース・ベースト・ビューを考えるための分析手法のフレームワークとしてはVRIO(Value:経済価値、Rarity:希少性、Imitability:模倣可能性、Organization:組織の4つの頭文字の略称)があります。

経営学理論とフレームワークをごちゃ混ぜに考えている方も多いですし、多くの経営(ビジネス)本では経営学理論とフレームワークを一緒に紹介していることも多いのですが、2つの違いについて理解しておくと良いと思います。

③ケーススタディ(事例研究)

ビジネススクールと言えばケーススタディをたくさん解いていくというイメージをお持ちの方も多いと思います。

1920年代に状況分析と経営判断の能力を訓練するケースメソッド(ケーススタディ)という教育アプローチをハーバード・ビジネス・スクールが開発し、多くのビジネススクールで採用されるようになりました。

ケーススタディは何かしらの問題を抱えている企業や組織、個人などについて、数枚から数十枚のケースペーパーから自分なりの問題点、解決策を考えて導き出していきます。

その上でグループワークを行ったり、授業で発表やプレゼンをしたり、レポートを書いたりします。

ケーススタディではどちらかと言うと経営学理論よりもフレームワークを中心に展開されることが多いです。

MBAを取得してから起業した経営者について

ここまでご紹介した上で、起業に役立ちそうだなと思われたことはありますでしょうか?

では実際にMBAを取得してから起業して活躍されている経営者の方について見ていきましょう。

楽天/三木谷 浩史さん

1993年にハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得した後、阪神・淡路大震災などをきっかけにクリムゾングループを設立。その後1997年に現在の楽天グループを創業し、2000年4月に上場。ちなみに公募価格は3,300万円で初値は1,990万円スタートのようでした。

引用参考:https://corp.rakuten.co.jp/about/team/01.html

スター・マイカ/水永 政志さん

1995年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校にてMBAを取得した後、1998年に現在のスター・マイカを創業しています。その後2006年10月に上場。

引用参考:https://www.starmica-holdings.co.jp/company/

ディー・エヌ・エー/南場 智子さん

1990年にハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得した後、1999年に現在のディー・エヌ・エーを創業しています。その後2005年2月に上場。

引用参考:https://dena.com/jp/company/message.html

ビザスク/端羽 英子さん

マサチューセッツ工科大学にてMBAを取得した後、2012年に現在のビザスクを創業しています。その後2020年3月に上場。

引用参考:https://corp.visasq.co.jp/company/officer

他にもたくさんいると思いますので、ご存知の方がいればお教えいただければと思います。

起業へのメリット

ビジネススクールに通った上で起業することのメリットについて見ていきましょう。

事業計画を立てやすい

事業計画が既に決まっている方もいれば、これから何をしようと考えている段階の方もいると思いますが、事業計画作成に役立つ授業やビジネスプランニングなど直接作成に携わる授業がある学校もあります。

また、既に起業している方や経営企画部門などで事業企画作成に詳しい学生、教員の方もいると思いますので、一緒に作成を手伝ってくれたりアドバイスをもらうことも出来るかもしれません。

金融機関や投資家向けにある程度整った事業計画書を出して資金調達をしやすくなることがメリットとして考えられます。

ネットワーキング

ビジネススクールに通っている学生や教員とのネットワークが出来ることも大きなメリットになります。

事業内容にもよりますが他の学生の方が働かれている企業がお客さんになってくれたり、紹介してくれたりすることもあると思います。

中には一緒に働きたいという仲間を見つけて起業をしている場合もあります。

年は違っても同級生や同じ学校出身ということで、利害関係が無く関わりを持てる方が増えるのは、大人になってからは結構貴重だったりするのではないでしょうか。

色々な人に会いやすくなる

働きながら学校に通う方も多いと思いますが、どこかの会社の〇〇ですと言うより、XX大学ビジネススクールに通っている〇〇ですと言った方が会ってくれたりインタビュー、アンケートをお願いしやすい場合が多い気がします。

特に修士論文の調査などで参考にしたい企業や人がいた場合、学生という身分であれば協力しても良いと思ってくれる方も増えると思います。

起業へのデメリット

続いて起業のデメリットについて見ていきます。

費用と時間がかかる

ビジネススクールに通うには費用と時間が結構かかります。

企業派遣の場合は自費での負担は無いと思いますが、すぐに辞めると学費の返還規定がある企業も少なくありません。

起業には事業計画の他に仲間集め、顧客開拓、登記といった事務処理などもあるため、結構やることも多くて時間がかかります。

既にある程度やりたいことが決まってるのであれば、お金と時間は起業に向けた準備に充てて早くスタートした方が良いでしょう。

起業志向の方が多くはない

ビジネススクールはそもそも大企業の経営幹部候補を育てるという趣旨からスタートしているため、起業に役立つプログラムの提供はあまり充実しているわけではありません。

また、学校にもよりますが起業志向の方もあまり多く無くて、せいぜい1割くらいとかのレベルだと思います。

そのため直接的に役立つ授業はほとんど無いと言っても過言ではありません。

起業は外部環境の影響が大きく再現性が低い

経営学理論は過去の企業や経営者などの研究分析を行って解き明かされてきた理論とご紹介しましたが、起業したての会社が取るべき戦略は基本的にはニッチ戦略しかありません。

そのために既存企業と同質化しない、なんらかの特徴や強みを元にした差別化が必要になってきます。

一方で経営資源が限られていることもあり、外部環境の影響にも左右されやすく、経営学理論で学んだような考え方がなかなか通用しない場合も多いです。

起業家の能力やタイミングなど再現性が低い要素が強いため、起業に関しては学術的に理論をまとめるのも難しいジャンルだと思います。

起業にMBAは役立つかどうかしっかり考えて判断を

MBAを取得してから起業した経営者についてもご紹介しましたが、逆に言うとわざわざMBAを取得していなくても活躍されている起業家の方が圧倒的に多いです。

数的にはおそらく99%以上の方がMBAを取得していないのでは無いでしょうか。

個人的な意見としては起業をこれから考えている方よりも、既に起業していてスケールアウトを狙っていきたい方、事業承継を予定している方は現状の企業課題や自分に足りない点が明確化している場合が多いと思うので、役立つ可能性が高いのではないかと考えられます。

ただ、日本におけるMBAの歴史が比較的浅いことから、今後は活躍される方が増える可能性が考えられますし、私もビジネススクールに行ったからこそわかったこともあったので、起業に興味関心があってビジネススクールを検討している場合には自分にとって役立つかどうかしっかり考えて判断をされると良いと思います。

この記事を書いた人
この記事をかいた人 太田 卓(MBAゼミナール プログラムディレクター・講師)証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2017年7月株式会社Milkyways設立。2022年より国内ビジネススクール(MBA)の入学対策予備校・塾であるMBAゼミナールをスタート。 早稲田大学大学院商学研究科専門職課程ビジネス専攻(現:経営管理研究科)修了。