MBAにおける「ゼミ」、「モジュール」とは何か?特徴について解説
ビジネススクールの中には呼び方に多少違いはありますが、ゼミやモジュールを設けているMBAがあります。
その中でゼミがある学校は入るのが必須なのか、修士論文は必須なのか気になる方もいるのではないでしょうか。
MBAにおけるゼミとはどのようなものなのか、いくつかのビジネススクールを例に挙げ見ていきましょう。
目次
MBAにおけるゼミとは
MBAのゼミはどのような特徴があるのか見ていきましょう。
大学とビジネススクールのゼミの違い
大学で卒業論文を書いたことがある人は、ゼミに入り、指導教官の指導を受けた記憶があると思います。
MBAにおいてもほぼ同じです。違いと言えばゼミに入るタイミングです。
大学は3年次に自分の興味を絞り、顔なじみの仲間がいるゼミに入ることが多いですが、ビジネススクールは多くが2年間のカリキュラムであるため、1年次からゼミ、もしくは2年次からゼミとなります。
1年次からゼミの場合は、何を研究するか早々に決めて、初対面の人と同じゼミとなることがあります。
ゼミがあると修士論文は必須?
ゼミがある場合には指導教員のもと論文作成を行うことが多いですが、修士論文必須ではない学校もあります。
例えば青山学院大学ビジネススクールではゼミは必須ですが、修士論文は必須ではありません。
ただし、必須ではないものの多くの学生が取り組んでいます。
ゼミがあるビジネススクールとは
ゼミを設けているのは基本的に修士論文やリサーチペーパーなどのアウトプットを修了要件にしている学校です。
指導教員の元、複数人で学びを深め合う場としてゼミがあります。
1年次からゼミが開始する代表的な学校は、早稲田大学夜間主プロフェッショナルコースと横浜国立大学です。
横浜国立大学においては、研究テーマまで絞ります。
これら1年次からゼミがあるビジネススクールの多くは、ゼミを絞って入試に臨みます。
何を学びたいか、研究したいかが入学前から決まっている人向けと言えるでしょう。
一方、入学してからゼミを決めるビジネススクールは早稲田大学夜間主総合コース、一橋大学、東京都立大学などがあります。
一橋大学は「ワークショップ」と呼びますが、複数の学生が指導教員について学ぶ、ゼミと同じ形式のものです。
1年間学んだうえで自分が明らかにしたい課題を絞り込んでいき、最も合うゼミを選択したい人に向いています。
表:「ゼミ」各校の比較2022年度情報 抜粋、ゼミのナンバリングは筆者によるもの
(各校ホームページ2022年1月31日検索)
開始時期 | 区分 | 学校 | ゼミ |
---|---|---|---|
1年次 | 国立 | 横浜国立大学 | 受験時に研究テーマを決める(2人の指導教員が決まる) ①企業のダイバーシティ&インクルージョン (D&I) 戦略 :人的資源管理論 (HRM) と組織行動論 (OB) からのアプローチ ②サステナビリティ時代における価値創造戦略とコミュニケーション |
1年次 | 私立 | 早稲田大学 夜間主プロフェッショナル (マネジメント専修) |
受験時に入るゼミ(モジュール)を決める ①マーケティング ②人材・組織マネジメント ③事業創造とアントレプレナー ④グローバル経営 ⑤技術・生産マネジメント ⑥スポーツビジネス |
2年次 | 国立 | 一橋大学 | ①経営A ②経営B ③マーケティング ④会計 ⑤金融 |
2年次 | 公立 | 東京都立大学 | ①経営戦略 ②マーケティング ③経営組織・ヒューマンリソースマネジメント・意思決定 ④会計学 ⑤マネジメントサイエンス |
2年次 | 私立 | 早稲田大学 夜間主総合 |
①競争戦略と市場創造戦略 ②市場と組織のインセンティブ設計 ③企業・事業戦略 ④フロンティアの経営学 ⑤デジタル・イノベーションとマーケティング ⑥イノベーションと価値創造戦略 ⑦経営戦略とオペレーション戦略 ⑧戦略とファイナンス ⑨サステナブルビジネスと戦略的CSR 他 計24ゼミ |
ゼミのメリットとは
1年次スタート・2年次スタートのゼミの違い
先述のような1年次からゼミがあるビジネススクールでは、入学したときから仲間ができるということです。
それぞれMBAについて調べてきている者同士、情報交換をして履修計画を立てたり、どのように効率的に学びを進めていくかなどの準備ができます。
十分な情報交換ができなくとも、知り合いが複数人がいるという状況だけでも心強いでしょう。
また、2年次からのゼミに比べて1年間指導教員との濃い関係の中で自分の研究課題について深く学べるメリットは大きいと言えます。
2年次からゼミがあるビジネススクールの場合は1年次に自分の興味関心を定めてから分野を選べるというメリットがあります。
例えば、入学時は業務においてもマーケティングを専門に行ってきて、これを極めたいという思いがあった人でも、専門領域をこれ以上深めるよりは他領域とのかけ合わせができたほうが自分の価値を高められるという考えに変わる人もいます。
MBAやビジネススクールへの理解がある程度できた後にゼミが選べるのです(ただし、2年次からゼミがある場合は必ずしも第一希望のゼミに入れるとは限りません。人数の上限に達した場合は第二希望のゼミで学ぶということもあります)。
どちらを選択するかは、考え方や自分が置かれている状況によっても変わるでしょう。
卒業後のネットワーク
ゼミの仲間とは、他の学生に比べて密な時間を過ごすため結束力が強くなります。
ネットワーク化をしっかり行っているゼミでは、10年以上前のゼミ生ともつながることができます。
MBAのネットワーク形成は横のつながりを主と考えがちですが、ゼミに入ると縦のネットワークも得ることができます。
ゼミがない場合はどうするか
ゼミが設けられていない学校の場合は、仲間ができないのではないか、学びが深くならないのではないかという心配があるかもしれませんが、MBAを志してビジネススクールの試験を突破した人であればその心配はそもそも不要と思います。
ゼミはなくとも、学生同士が深く交流する機会は頻繁にあります。
授業の中でディスカッションが行われ、課題もグループで挑むものが多いため、よほど消極的な参加の仕方をしない限り、仲間は増えていきます。
大規模なビジネススクールにおいても密な関係を作れます。
課題を一緒に成し遂げた、海外で行われる講義に参加したなどで一生の友人を得ることができたという人も多くいます。
縦のネットワークにおいても同様です。
ゼミがなくとも、小規模なビジネススクールであればゼミに関わらず縦のネットワークは強いでしょう。
授業単位で縦のネットワークを築いている教員もいるため、そのような授業をいくつか狙って受けるのも良いでしょう。
むしろ、ネットワークを作る側に自分が回っても良いかもしれません。
また、学びの深さは、ゼミに属するかどうかはあまり関係ありません。
ゼミは「教えてもらう場」ではないからです。
指導教員が手取り足取り指導してくれるというわけではなく、方向性を示し、自分で修士論文などのアウトプットに挑みます。
また、ゼミの仲間がいつでも手を差し伸べてくれるわけではありません。
貢献し合うものであり、助けてほしいことは明確に発信しないと助けようもありません。
これは普段の授業にあっても同じことです。
ゼミのありなしに関わらず、学ぶ姿勢や貢献度の高さによって学びの深さは変わります。
受け身ではなく、学びを取りに行く姿勢が大切であると言えるでしょう。