MBAは転職に有利なのか?役に立たないのか?
MBAを志す人のうち、多くの人がより良い職場やポジションへ移ることを狙って、少しでも今の自分の価値を上げておきたいと考えます。
では、実際MBAは転職市場でどのくらい役に立つのでしょうか。
MBAをきっかけに転職する場合の成功例と失敗例、在学中にしておくべきことなどを見ていきましょう。
MBAを活かした転職例
こういう転職は成功する・失敗するとは一概には言えません。
ポジションや相性、それまで培ってきた実績などが影響するためです。成功例も失敗例もあくまでケーススタディとして捉えてください。
成功例
①MBAのネットワークを使った例
– スカウトの場合
ビジネススクールには経営者や経営陣、人事担当者もたくさん学びに来ています。
その人たちは学びだけでなくリクルーティングの目的も持って来ていることがあります。
自分と考えが似ていたり、スピード感がある仲間を事業の責任者として招き入れることがあります。
同級生としてお互いの人となりを知っているので、入ってみてこんなはずじゃなかった、ということは少ないでしょう。
– 推薦の場合
教員や同級生の推薦で入社する人も少なくありません。
キャリアに迷って、指導教員に相談することもあるでしょう。
実務家教員は実務家として素晴らしい実績がある人達なので、顔が利きます。
そのネットワークで自分の元部下(現役経営者など)に教え子を推薦します。
また、同級生の中にも40代・50代で会社の高いポジションにいる人が自社や他社に推薦してくれることがあります。
ただしこの場合、紹介してくれた人と働くわけではないので、紹介先との相性が合わないことも考えておきましょう。
②通常の転職活動
外資系戦略コンサルタントは、MBAの若手に対してコンサルタント未経験者であっても積極的にスカウトをします。
外資系戦略コンサルタントで若手が何を求められるか理解できていれば、長時間労働や厳しい指導にも耐えて得るものはあるでしょう。
例えば慶應ビジネススクール、一橋大学ビジネススクール(経営分析・全日)、京都大学ビジネススクールなどは新卒の若手の方も多いため、コンサルティング会社への就職希望者が比較的多く、毎年一定数が内定をもらっているようです。
失敗例
①大企業からベンチャーへの転職
授業ではスタートアップ・ベンチャー企業の事例を取り上げて戦略について解説をしたり、ケーススタディとして自分がその会社の経営者だったらどうするか想像しディスカッションするものがあります。
また、学生の中にベンチャー企業の役員や幹部もいるため、ベンチャー企業を身近なものとして感じます。
そのうち「自分にもできそう」と思うようになります。
ただ、会社員でビジネススクールに通う人の多くが大手企業に勤務しています(2年間の学費が国公立で100数十万円、私立なら300万円ほど。これを払える人、とすると年収が一定以上の大手企業社員が多くなる)。
そのような大手企業に勤める会社員がベンチャーに転職すると、想像以上のギャップに苦しむことになります。
スタートアップであれば、雑居ビルに入居していることや男女トイレが共同ということもあるでしょう。
バックオフィスはおらず、自分たちで事務作業をこなしたり、自分よりもずっと若い人が上司であることもあります。
そのような価値観や文化、環境が異なるところで下積みからやっていけるかどうかです。
「勢いがあるからやってみたい」「大手企業で業務の一部だけをこなすことはもう飽きた」という曖昧な動機・弱い動機で転職して失敗している例はよくあります。
多少年収を下げてでもやりたいことがある、といった方であれば大企業からベンチャーへの転職が成功しているケースも多くあります。
②急いだ転職
在学中に転職をしている方も一定数見受けられますが、夜間MBAの場合には通常のお仕事+学校+転職活動と非常に多忙になることが多いです。
その中でも時間を見つけて一生懸命転職活動をしてキャリアアップに繋げている方もいますが、業界分析や企業分析にしっかりとした時間をさけずに当初の思い込みと違っていたという場合もあります。
多忙の中でも転職活動を行うのであれば、しっかりと分析を行えるかどうかの時間を取れるかも考えてから行うことがおすすめです。
転職にMBAは有利なのか
MBAなら転職に有利、とは言い切れませんが、有利になりやすい会社があることは確かです。
MBAは日本ではまだまだ認知度が低く、MBAホルダーも日本の人口からいうとほんの一握りです。
規模の大きな私立大学1校の年間の卒業生と全国のMBA生の年間の合計卒業生を比べてみても少ないと思います。
そのくらい一般的ではないため、転職市場においても「MBAだから採用する」という会社は一部を除きありません。
MBAよりも、その人の経歴や実績を重視します。
実績があることは前提として、MBAが有利に働く会社、職種を選んで応募するとさらに高年収や望む仕事に近づくでしょう。
MBAを重宝する業界や企業とは
MBAを重宝する業界や企業の傾向について見ていきましょう。
MBAでは経営戦略、マーケティング、財務、ファイナンス、人材組織などを学ぶため、当然ながら、これらのMBAの知識を使う会社や職種であれば、有利に働くでしょう。
例えばコンサルティング会社や投資銀行などの金融系会社。
職種はコンサルタントやアナリスト、その他管理部門における経営や財務、人事など戦略を考える部門においても有利になる可能性が高いです。
日本企業は「実績」がかなり重視されます。
実績があっても、より自社の求めている分野・規模に近くなければならないという実績の近似性も求められます。
前例重視なのです。
外資の場合、もう少しこれが寛容です。即戦力になるかどうかを見ています。
「この実績であれば、応用可能だろう」と総合的に判断してくれることは多いのです。
ただし外資系の場合には語学力の一定以上求められることも多いため、苦手な方は日頃からコツコツとトレーニングを積み上げてレベルアップしていきましょう。
転職を有利に進めるには
実績がない状態でMBAのカードだけで転職を成功させようとするのは中途採用では難しいと言えます。
「実績なんてないけど転職活動を有利に進めたい!」という人はどうしたら良いか。
まず、仕事をしながらビジネススクールに通っている人は、仕事も頑張ることです。
仕事と勉強、本分は仕事ではないでしょうか。会社が業務や時間を配慮してくれているとはいっても、給与をもらっている以上、結果を出さなくて良いわけではありません。
実績を出すには、できるだけ形・数字として可視化できるものが良いでしょう。
ただ「頑張りました」では具体的なイメージを人に伝えられません。
転職時にアピールができません。
例えば、人事であれば採用の工数を減らして毎月の採用業務にかかる時間を40%削減した、営業であれば既存顧客への提案方法を変更して売上を120%伸ばした、総務であればリモートワークの推進とオフィス移転を提案して家賃を70%下げたなどです。
具体的に数字として表せることをやってみましょう。
仮に今自分がやるべき大きな課題がなくとも、社内で手つかずになっている困りごとを自分で提案してやってみてはどうでしょうか。
その過程でMBAで学んだ方法を試しながら進めてみる。
MBAの実践トレーニングになり、会社から感謝され、実績ができるという一石三鳥の取り組みです。
もしかすると、これで社内の評判があがり、転職という選択肢が消えるかもしれません。
転職における年収アップ
MBAで数百万円の年収アップ、というデータも存在しますが、それは国内MBAだけではなく海外MBAのデータも含まれていることがあります。
海外ではMBAという実績にお金を払うため、年収が底上げされたデータになります。
英語で交渉、ディスカッションができる人材であれば、日本国内で高い年収でも来てほしい会社はたくさんあります。
また、同じ職種で業界を変えるだけでも年収は大きく変わります、これはMBAが直接的に作用したというよりも異業界転職をしたことが原因でしょう。
これはMBAでビジネスモデルを研究したり、企業分析を深く行うことで目利きができるようになります。
年収アップしている人は、MBAそのものが転職活動において有利になったわけではなく、MBA取得に至るほどの実績や能力を生かしていたり、2年間で良い会社を見極める力を養えていることになります。
「MBAで転職」ではなく「MBAの知識や知見、ネットワークを使った転職」を意識すると良い結果になるのではないでしょうか。